不法滞在に対する罰則規定:3・10年入国禁止

1996年改正移民法の影響

不法滞在に対する罰則規定:3・10年入国禁止

はじめに
3年間の入国禁止
10年間の入国禁止
不法滞在はいつから始まるのか?
3・10年入国禁止規定が適用されない人々
不法滞在の進行停止
移民法第222条(g)項との関連
在留資格調整(非移民ビザから移民ビザへの資格変更)との関連
まとめ

はじめに
1996年9月に施行された「1996年不法移民改革及び移住者責任法、以下、IIRIRA法」により移民法が大幅に改正されました。特にIIRIRA法第301条により移民法第212条が改正され、「3・10年入国禁止規定」が盛りこまれました。(INA法第212条(a)(9)(B)項)


3年間の入国禁止
1997年4月1日以後、米国に181日以上1年未満の間続けて不法滞在していた外国人が、国外退去手続開始前に自発的に国外に出た場合、離米の日から3年間入国が禁止され、この間非移民ビザ、移民ビザを問わず一切のビザを取得できません。ビザ免除プログラムを用いて入国することも認められません。

181日以上1年未満不法滞在した外国人に国外退去手続が開始された後に当該外国人が離米した場合、この規定は適用されません。しかし国外退去命令処分を受けて国外に出た場合、移民法の別の規定により一定期間入国が認められなかったり、場合によっては永久に入国できなくなる可能性は残ります。


10年間の入国禁止
1997年4月1日以降、米国に1年以上続けて不法滞在していた外国人が出国した場合、離米の日から10年間入国が禁止されます。この間非移民ビザ、移民ビザを取得出来ず、またビザ免除プログラムで入国することも認められません。3年間の入国禁止規定の場合と異なり、10年の入国禁止規定は当該外国人に対し国外退去手続が開始されているか否かに関わらず適用されます。


不法滞在はいつから始まるのか?
不法滞在とは「司法省長官により許可された滞在期限を超えて滞在すること」と定義されており、I-94カ(到着・出発記録)に記載された滞在期限を越えた日から始まります。但し。滞在期限が切れる前に、移民裁判所判事または移民局により在留資格違反(例えば不法就労)があったと判断された場合、その判断が下された日から「不法滞在」が始まります。例えば、米国国内で他の非移民ビザへ在留資格変更の申請を移民局に行い、移民局が申請審査中に発覚した在留資格違反を理由に申請を却下した場合、申請却下日から「不法滞在」が始まります。

F-1・M―1(学生ビザ)やJ-1(交流訪問者)ビザについては、ビザ保持者に在留資格違反がなく、有効な留学生資格証明書を所持している限り、通常、いつまで米国に滞在できるかを示す期限はなく、I-94には「D/S(「Duration of Status」)」と記載されます。ただし、例外的に、滞在期限が定められる場合もあります。これらのビザ保持者の「不法滞在」がいつから始まるとされるか、移民局は以下のような解釈をしています。

在留資格に違反する行為(例 不法就労や自発的に学校に通うのを止めた場合など)をした日の翌日
履修課程・プログラムの終了日(プラクティカル・トレーニング期間・法定猶予期間を含む)の翌日
移民裁判所判事から強制送還命令や入国拒否命令が出された日の翌日
例外的に、D/Sではなく、滞在期限が定められたF・MまたはJビザ保持者の場合、I-94記載の期限満了日の翌日

3・10年入国禁止規定が適用されない外国人

移民ビザ保持者
ただし条件付移民ビザ保持者の場合(アメリカ市民、または移民ビザ保持者との結婚後2年以内に婚姻関係に基づいて移民ビザを取得し、米国に入国した外国人配偶には2年間のみ有効なビザが付与されます。これを「条件付移民ビザ」と言います)、移民ビザの有効期限が切れる前に条件を取り除く申請をしなかったり、申請が却下された場合、有効期限が切れた日から「不法滞在」が始まります。
亡命申請をしている外国人
18歳未満の子供(18歳までの不法滞在はカウントされませんが、18歳の誕生日以降の不法滞在はカウントされます。)

不法滞在の進行停止
① 移民法第212条(a)(9)(B)(iv)項 – 2000年3月3日までの移民局解釈
I-94の滞在期間が切れる前に滞在期間の延長申請、または他の非移民ビザへの在留資格変更申請をしたが、審査を待つ間に滞在期限が切れてしまった場合、滞在期限が切れてから120日間までの滞在は合法と見なされていました。しかしこの120日間の不法滞在の進行停止は、3年の入国禁止規定の対象となる外国人に対してのみ認められ、滞在期限が切れる前に延長申請または在留資格変更申請を行い、審査を待つ間に滞在期限が切れ、その後1年以上審査結果が出なかったとしても、120日間の不法滞在進行停止は認められておらず、当該外国人には10年間の入国禁止規定が適用されてしまう結果になっていました。

② 移民法第212条(a)(9)(B)(iv)項 - 2000年3月3日以降の移民局解釈
移民局は2000年3月3日、不法滞在期間の進行停止を120日間と限定せず、「申請が審査されている全期間」の滞在を合法と見なすとする覚書を発表しました。この覚書により、滞在期間の延長申請、在留資格変更申請が移民局により許可された場合、滞在期限が切れた後の滞在期間全てが合法扱いになります。他方不法就労の発覚、あるいは申請が適時になされたかったために申請が却下された場合、滞在期限が切れた後に滞在した全期間が不法となります。


移民法第222条(g)項との関連
① 移民法第222条(g)項の概要
移民法第222条(g)もIRIRA法により移民法に新たに追加された規定です。同規定により、I-94に記載された滞在期限を1日でも過ぎて滞在するとビザは即日無効となり、アメリカを離れ、再入国する場合、原則として自国のアメリカ大使館・領事館でビザを再発行してもらわなければなりません。また一度でもこの規定の適用を受けると、その後の非移民ビザスタンプの申請(更新を含む)すべてについて、一旦自国に戻り、アメリカ大使館、領事館を通じて申請を行わなければならなくなります。

滞在期限は切れていないが、滞在期間の延長申請、その他の非移民ビザへの在留資格変更申請が不法就労など在留資格違反の発覚などにより却下された場合も、移民局の却下決定の日をもってビザは無効となり、移民法第222条(g)項の適用を受けます。

なおこの規定はビザを持って入国した者に適用される為、免除プログラムで入国した人には適用されません。

3・10年入国禁止規定は1997年4月1日以降の不法滞在が対象となりますが、移民法第222条(g)項は1996年9月30日(IIRIRA法施行日)以降滞在期限を1日でも越えて滞在した場合に適用されます。

すでに無効になったビザを所持したまま日本に帰国後そのことに気付かずに再入国しようとすると、適切なビザを持っていないとして入国を拒否され、その後原則として5年間米国への入国が認められません。

自国以外のアメリカ大使館、領事館は、個々のケースについて「特別事情」があると判断した場合、第222条(g)項の適用を免除する場合もあります。

この第222条(g)項も、3・10年入国禁止規定同様、非移民ビザを持って生活している外国人に大きな影響を及ぼしています。例えばI-94の滞在期限の切れたEビザ(貿易駐在員、投資駐在員)保持者の場合、IIRIRA法施行以前であれば、再入国時に新たなI-94で入国することでき、Eビザの有効性に何ら影響はありませんでした。IIRIRA法施行後は、I-94の滞在期限が切れるとEビザは無効になり、自国のアメリカ大使館・領事館で新たにEビザを発給してもらわなければ再入国が出来なくなります。

② 移民法第222条(g)項と「3/10年入国禁止規定」との関連
3・10年入国禁止規定は外国人が自発的に米国を離れた場合にのみ適用されるため、米国外に出ない限りこの規定の対象になりません。しかし第222条(g)項により、1日でも滞在期限を越えて滞在すると、その後非移民ビザスタンプ申請をする場合、必ず米国を出て自国に戻る必要があります。大使館、領事館は、3・10年入国禁止規定により、181日以上不法滞在していた外国人にはビザを直ちに発行してくれません。


在留資格調整申請(非移民ビザから移民ビザへの切替申請)との関係
在留資格調整申請とは、非移民ビザで滞在している外国人が移民ビザ請願の認可取得後に米国国内で移民ビザへ切り替えるための申請で、移民局に行います。原則としてI-94に記載された滞在期限を越えて滞在している外国人はこの申請を行う資格がなく、一旦国外に出てアメリカ大使館、領事館を通じて移民ビザ保持者としての登録申請をする必要があります。この申請を行うために国外に出てしまうと、申請しても不法滞在していた期間により3年または10年間ビザを発給してもらえないという事態に陥いることになります。

1994年の移民法改正により上記原則に対する例外規定が設けられ、不法滞在者は1,000ドルの罰金を支払えば米国国内の移民局に在留資格調整申請を行うことが可能になりました。(INA法第245条(i)項)しかしこの例外規定は1998年1月15日以降廃止されることが決定され、同年1月14日までに移民局に移民ビザ請願、あるいは労働省に外国人労働者採用許可申請をした外国人についてのみ在留資格調整申請を行うことを認める措置が採られました。この措置は3・10年入国禁止規定を避けるため米国に留まっていた多くの不法滞在者にとって朗報となり、同日までに多くの外国人労働者採用許可申請、移民ビザ請願が提出されました。

その後2000年12月21日「合法移民および家族公平法」が成立し、廃止されていたINA法第245条(i)項が2001年4月30日まで一時的に復活し、以下の要件を満たす不法滞在者については、国外に出ることなく同条項を利用して在留資格調整申請を行なうことが認められました。

2001年4月30日までに当該外国人のための移民ビザ請願が移民局になされたか、あるいは労働省に外国人労働者採用許可申請がなされたこと。
2000年12月21日、アメリカにいたことが証明できること。

2001年4月30日以降再び移民法第245条(i)項は再び廃止されました。


まとめ
IIRIRA法が成立したことにより、I-94の管理をこれまで以上にしっかり行う必要があります。入国禁止規定の適用に対して免除申請を行うことは出来ますが、この申請はかなり厳しいものです。特にビザの有効期限と許可された滞在期限とが異なる場合には注意が必要です。


ここで提供されている情報はアメリカ移民法についての一般的な情報であり、個々の事例の法的アドバイスとして利用されるものではありません。この情報だけで御自身のケースを判断なさらないで下さい。

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